
このままオイラは耳がおかしくなって、このケースから出られないまま死んでしまうんだって思った時、突然ガンという衝撃がオイラ達を襲ってきた。
オイラは攻撃されたんだと思い、オイラの立派に折れ曲がった尻尾が膨らんで警報を鳴らし始めた。
その後は、あの轟音が少しだけ静かになって、代わりに引きずられるような地響きのような音に替わった。
今度はなんなのか、これ以上オイラをいじめないでくれって、天に願った。
すべての轟音が止んだ後、ドンと言う音とともにオイラ達が放置されてた部屋のドアが開いて外の光が少し入ってきた。もう外は夕闇になってた。
オイラこんなに長い間、外を連れまわされたり、知らないところに放置された事がなかったから、ほとほと疲れてもうどうにでもしてくれって思った時、となりでチャンスがオイラ達を呼んだんだ。
あーオイラ一人じゃなかったんだって解った時は、涙が出たよ。オイラ恐る恐るチッチを呼んでみたんだ。
今朝から余りの緊張で1度も鳴いていなかったオイラの声は、しわがれてて自分の声じゃないみたいだったけど、チッチが、かすかに返事してくれたときは、キャリーケースの中で飛び上がりそうになった。
オイラ達の感動の再開をよそに、汗臭い男どもがドスドスと乱暴に入ってきた。
オイラ達は、3人、心を1つにして身構えたけど、これまた抵抗虚しくキャリーケースごと軽々と持ち上げてまたどこかに運ぼうとする。
オイラは、涙流して懇願した。せめてチャンスとチッチとだけでも一緒にいさせてくれって。
飯係は、諦めるからチャンスとチッチとだけは離れ離れにしないでくれェーって。
願いが通じたのか、今度はチャンスやチッチの存在が確認できるほど近くにおいてくれた。でもオイラ達を運ぶ汗臭いごつごつした男がオイラ達は気にくわなかった。
そしたら、また願いが叶った。
良い香りのする綺麗なお姉さんにオイラ達は、手渡された。それも3人一緒に。やっぱり、こうこなくちゃ!
むさ苦しい男より、やっぱ綺麗なネェちゃんの方が希望が沸くってもんだ? でも、やっぱり幸せは続かなかった。
またしても人通りの多い所につれてかれて床に置かれた。その位置からは汚い靴しか見えなくて、いつ蹴飛ばされるか不安でならなかった。
今度はどこに連れて行かれるの?オイラ達をどうするつもりなの?オイラもう我慢の限界だ!
心の叫びを聞きつけたのか、見慣れた汚い靴が近づいてきた。オイラ達の前で立ち止まり、かがんで覗き込んだ顔は、飯係だった。「大丈夫?」ってヨ
大丈夫な訳ないだろう!お前は一体今までどこ行ってたんだ! オイラ達を放って何してたんだ!
早くここから出せ! オイラ達、3人の猛抗議をよそに、飯係は、のんきに「疲れたねえ」なんてぬかしやがる。もう少しで終わりだから、我慢してねっだとヨ
それから、厳重に装備されてた、テープやネットが外されて、飯係がオイラ達を車に連れて行った。
そこで「あれにお前達はのってたんだヨ」って見せられたのは、大きな大きな翼を広げたような白い鳥みたいなものだった。
あんな大きな奴は初めてみた。でも、あいつの顔は、絶対忘れない。
オイラの一生の天敵だ!大きな音でオイラ達を脅かし続けやがって!チクショウ!
今度あったら、オイラのパンチとキックをお前の鼻面にお見舞いしてやるからな!!
飯係は、オイラに向かって、野良だったくせに飛行機に乗って移動なんて考えられんねっなんて言って笑っていやがる。
おい、飯係!そういう問題じゃないだろう!オイラ達がどんなに不安でお前を呼んだか考えろ!
やっと、この狭いケースから出されたのは、それから車で15分位移動した後だった。
見慣れないその家には、なんと、オイラのお気に入りの爪とぎも、おもちゃもベットもあった。オイラ達の臭いのするトイレや、チャンスが抗議を続けたソファもあった。
飯係は、チャンスの抗議の跡をみつけて泣いてたよ。でも、チャンスは堂々としててそれぐらいは当然だろうって言ってのけた。オイラ、ますますチャンスのファンになっちまったヨ。
それでも、チャンスの怒りは、1週間くらい納まらなかったし、チッチは、まだ自分のキャリーケースから出て来ようとしないで、帰りたがっていたが、当然、願いは聞き入れられるはずもなく、諦めた。
オイラは、この家で一番乗りでオシッコをして、オイラの臭いをつけた。
ここは、前の家と違ってオイラ達以外にも、たくさん住んでるやつがいるんだ。そいつらは、大抵、夜中にやってくる。
だからオイラここにきてからは、夜中はたいくつしないですんでるんだ。黒くてすばしっこい奴や、足がいっぱいの奴や見た事もないようないろんな奴がたくさんいて、オイラ達に勝負をしかけてくる。
オイラ達、3人がかりでもダメな時もあるけど、うまく行くときもある。まぁ、勝敗は、五分五分ってとこだ。結構楽しみながらやってるよ。
それから、もう2度とあんな思いをオイラ達にさせないように、飯係に教える必要がある。
そこでオイラは、考えた。
飯係が出かける時は、不審な行動をとらないように見送る事にした。帰って来たときも、必ず一番にチェックをいれに行くことにした。
飯係が淋しそうな時や、疲れていそうな時は仕方ないから膝にのって甘えてやるし、オイラ達がどんなにかわいくて良い奴か教育してやれば、飯係も少しはおとなしくしてるはずだろ?!
それでも、たまに、どうしても帰りたくなる時がある。母ちゃんや兄ちゃんと一緒に見上げたあの空がある所に。
本当いうと、オイラ、ここは好きじゃない。
ここにきてから、飯係は、イライラしてたり、怒ってたり、泣いてたり、オイラ達の事も目に入らなかったり、おかしい。でも、オイラ、あの時誓ったんだ。
オイラのこの折れ曲がった尻尾で掴む幸せは、飯係にくれてやるって。それに、あの飛行機とかいうしろものと闘っている時、少しでも飯係を疑ったオイラは自分を恥じてるんだ。
だから、飯係とチャンスとチッチと一緒なら、どこにいても大丈夫さ。これから先、ここにもいつまでいられるかもオイラにはわからない。
でも、こいつらはオイラの家族だから、いつまでもどこにいっても、一緒だよ。
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