
引越しを半月後に控えた梅雨の入りの頃、くろじが吐き始めました。
くろじは、元々吐き癖があり、朝、下僕が目覚めるのを待って「新しいカリカリを入れろ」と要求するのですが、3回に一度ぐらいの割合で食べたものを、原形のまますぐ吐いてしまうことがありました。
心配だった下僕は、獣医さんに相談したみたのですが、獣医さん曰く、「食べてすぐに原形のまま吐いてしまうのは、緊張性の吐き気で、飼い主が戻るまで我慢してて、帰ってきた安心感で食べてしまうが、その間の緊張と我慢で胃液が濃くなり吐いてしまうのはよくあることなので心配は無いでしょう」との事だったので少々の吐き気には大して心配はしていなかったのです。
っが、今回の吐き方は尋常ではありませんでした。
胃の中の消化途中のものを吐いて、胃が空になっても胃液を吐き続けました。
まる1日吐き続け、食欲もなく、オシッコもせず、翌日には、ぐったりと元気がなくなってしまい、「これはやばい!まる1日なにも食べていなけりゃ、こんな小さな体では死んでしまう・・・・。」
しかし、下僕の頭をよぎるのは、前回病院に連れて行った時の苦い思い出です。
できれば、本気で四つ牙むいて噛み付いてくる奴を病院に連れて行くのは避けたい・・・、くろじが怖い・・・と、思い悩みました。
前回の教訓があり、ペット用の拘束ネットをペット雑誌で購入していたのですが、これは全くの気休めで、荒れ狂ったくろじを想像すると意味がないように思えて身がすくみます。
しかし、このまま我が愛しのめんこちゃんを放っておく訳にはいかない下僕は、意を決し、まず、病院へ下見に行き、くろじの性格や病状をご理解いただく努力をすることにしました。
前回、お世話になった動物病院には、月に1度獣医師専用とかかれたカリカリを購入しに通っていたのですが、どうしてもその時の対応に不信感があり、今回は違う病院に行きたかったのです。
診療時間外だったのですが、受付の女性は親切に話を聞いてくださり、本気で噛み付く凶暴な面のある、おちゃめなくろじの性格も理解していただきました。
「そのような猫ちゃんも中にはいらっしゃいますが、対応させていただきます」とのお言葉をいただき安心した下僕は、早速連れて行くことを決心しました。
家に引き返しくろじをペットキャリーに入れようとしても、くろじは抵抗する元気もありません。
それでも、前回の記憶が蘇るのか、病院までの短い道のりを車の中で必死に鳴いていました。
病院につき、先ほどの受付の女性が出迎えてくれたのですが、奥から年配の女性が現れました。下僕の頭の中に何か嫌な予感が・・・・。
受付の女性には、先ほどしつこいほどにくろじの性格を説明してあったので安心だったのですが、その年配の女性が同じ質問してくるので返答しようとしても、そのおばさんは、全く聞く耳なし。
心の中で人の話を聞く気が無いのなら聞いてくるなよ!と毒づきながらも、最近、下僕は自他共に求める大人、心とは裏腹に顔は愛想よく、説明を繰り返していました。
でも、心の中では、お前の話なんか聞きに来たんじゃないんだよ!どうしてばばぁって人の話を聞こうともせず、大声で馬鹿みたいに、まるで「これが私の自己主張よ」みたいに話す?自己主張したいのなら、誰か他の場所で他の人にやってくれ、お前の話なんかどうでもいいんだよと思いっきり毒づいていました。
そうです、下僕が全く大嫌いなタイプのおばさんでした。
前回の病院から変えたのも、話を聞く耳の無い人に、いくら努力して説明しても、その人の耳になど聞こえていないと、よ〜く理解したので、今回はちゃんと会話ができ、相互理解ができる、安心感のある獣医師さんに診察してもらいたかったからなのです。
人間同士の関係なら、そんなおばさんには、近づかないし、どうしても仕方ないときはオモッイっきり距離を保つなど、自己防衛するのですが、大切なくろじを診察していただくには、獣医師としての能力以前に人として、何かを自分が質問するのなら返事を待って、その返答に答えるという、会話能力?自分が質問して相手が答えても無視して、自分の言いたい事を大声で押し付けて、会話が成り立っていると勘違いしている、自分完結型人間には、まかせられないのです。
前回みたいにこのおばさんが獣医だったらどうしよう・・・。またしても病院選びに失敗したか・・・。「ごめんよ、くろじ」と心で詫びながらも、今さら、「やっぱり別の病院を探してみます」とはいえず、待合室で待つこと数分、自己反省の時間帯でした。
「くろじちゃん、診察室にどうぞ」と声をかけられ、恐る恐る診察室に連れて行くと、そこは奥に扉があり、横にはのぞき窓みたいな小さな窓がありました。
おばさんがその小窓から、「噛み付く癖があると言うことなので、まずは、飼い主さんだけで、エリザベスカーラーをつけてあげてください」と指示されました。
「指が2本ぐらいはいる程度に余裕をつけてください。」と言われ、用意されていたエリザベスカーラーは、たぶん猫用の大きさ。
最大の大きさでつけるも、くろじの首には小さすぎ、指が1本も入る隙間もなく、苦しそうでおもわず失笑してしまいました。
もっと大きな子犬用ぐらいの大きさのエリザベスカーラーをもう1つ借りてやっと指が2本入る隙間を確保できました。
それを小窓から確認したおばさんは、鷹揚にうなずき、「そのままお待ちください」との事でした。
くろじ 再び病院へ行くの巻き 後編へ
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