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 我が家の くろじ 


ちゃんす・チッチ・くろじ



  くろじ 再び病院へ行くの巻き 後編 




待つこと数十秒、くろじは、目をギロつかせ、隙があれば逃げ出そうとモゾモゾと動こうとしますが、もうこうなったら腹を決めてここで診察してもらうしかないと諦めた下僕に押さえつけられています。

下僕と目が合うと悲しげな鳴き声で必死に「なんでこんなことするの?」と訴えてきます。

その時、奥の扉がガラガラと開き、現れたのは白衣をきたいかにもと言った感じの中年の男性と、エプロンのような作業服をきたちょっとロン毛で茶髪の男の子でした。

えっ?この人?やったー!あのおばさんじゃないの?!

心の中で小躍りしそうになりながら、「いや、待てよ、喜ぶのはまだ早い。こいつもあのおばさんに毒され、人の話なんか聞かないタイプかもしれない」

しかし、受付の女性が下僕の話を親切に聞き、作ってくれたカルテを確認しながら、くろじを押さえつけている下僕と茶髪のロン毛の男の子が交代してくれ、がっしりとした腕でくろじの両手両足をつかみ、体全体を使いくろじを押さえつける男の子をみて一安心。

獣医師さんが症状の確認をしながら、きちんとくろじの目線でくろじに挨拶してくれた様子をみてまたまた一安心。

獣医師さんは、いかにもといった感じの方で、言葉数は少ないものの、きちんと下僕の話を聞き、小さな頃から腰より下の下半身を触ると本気で嫌がり噛み付く、前回病院に行ったときの病歴などひと通り聞いて下さりました。

「では、体重と熱を測ってみますね」と言われ、くろじの体重は、6.7kg!前回より少しダイエットに成功していました。

熱を測ると40度近く。「これはちょっと高すぎますねぇ」と言いながら、行動はてきぱきとしていて、余計な時間や緊張をくろじにかけないように配慮してくれてました。

くろじは、自分の顔の前に下僕がいることに気づき、「一体、俺を抑えている無礼な奴は誰なんだ?」と言わんばかりに、身をねじらせて茶髪のロン毛の男の子の顔を見ようとします。
それに気づいた男の子は、くろじの目線まで顔を低くし、挨拶してくれました。うなり声1つあげず、睨みつけもしなかったので、くろじの御めがねに叶ったのでしょう。

「後は、奥に入って検査してみますので飼い主さんは待合室でお待ちください。」と言われ、「一緒にいられないんですか」と聞き、苦笑いされてしまいました。再度、「本気で噛み付くのでお願いします」と言い残し下僕は渋々待合室に向かいました。

待合室での時間はとても長く感じられ、獣医さんに噛み付いてはいないか、くろじは大丈夫だろうかとてもとても心配で手のひらに汗が滲むほどでした。

そうです。下僕の目の届かないところで、下僕以外の人間にくろじを任せたことがないのです。それは、下僕の過保護ともいえる所業なのですが、心配でたまらないのです。

自称猫好きの方の中には、シッポを掴んで引っ張り出したり、足を乱暴に掴んでも、猫なんだからこの位大丈夫だろ?と平気で考えている方がいるので下僕の御めがねにかなった方以外に我が愛しのめんこちゃんを任せたくないと言うのが本心なのです。

耳を澄ませて聞き耳をたて、くろじの鳴き声が聞こえないか細心の注意を払いました。

ほどなく、茶髪の男の子が扉を開け、「中にどうぞ」と招き入れてくださりました。

中に入ったとたん、男の子が「下半身を触られて嫌がるのはいつからですか?」

「えっ?」唐突の質問にポカンとしてしまいました。

「昔からですけど・・・」何故?何故そこを聞くの?

遅れて入ってきた獣医さんがまたまた「下半身を触られて嫌がるのはいつからですか?」

え〜っ!「生まれつき骨の膜が薄かったらしく、拾ったときも足を骨折していたぐらいだったので、もうその頃から下半身を触られるのは嫌がっていましたが・・・」

なぜ、なぜなの?くろじに何があったっていうの?

「ちょっと、レントゲンを見ていただきたいのですが、こちらが正常な猫のレントゲン。こちらがくろじちゃんのレントゲンです」

「・・・・はい」

「ここを見ていただければわかると思うのですが、ここの骨ですが、正常な猫ちゃんは、きれいな長方形なんです、こちら、くろじちゃんの同じ箇所の骨は見てすぐわかるように台形の形に変形してしまっているんです」

「えっ・・・。」

「だから、下半身を触られるのを極端に嫌がっていたんでしょうね」

茫然自失のまま、くろじのレントゲンと正常な猫のレントゲンを見比べると、確かに腰の辺りのくろじの骨があきらかに形が違う!

「今回の症状も、この変形してしまった骨が、神経を圧迫して、痛みから発熱し、吐き気までもよおしていたと思います。
原因は、はっきりしませんが、老猫などにはよく見られる症状で、完治することはないので、気をつけて様子をみてあげてください。
今日は、痛み止めと熱を下げるお注射をしておきますので、明日もう一度診せてください。」との事。

下僕は、青天の霹靂でした。拾ったときに連れて行った獣医さんに、生まれつき骨に以上はあるが注射で直ると言われ、もうすでにくろじの大切な骨は完治していると思っていたので、今回の原因はまったく別のところにあると思い込んでいたからなのです。

心の中で「完治することも無く、このままくろじは痛みと付き合わなければならないのか?なっなんて可愛そうな・・・変わってあげられるなら下僕が身代わりになりたい・・・。だって、下僕なら痛いと言うことができるけど、くろじがいままで痛みに耐えてたなんて、下僕は今の今まで気がつかなかった・・・下僕のバカバカ」下僕は自分を呪いました。

当のくろじは男の子に押さえられながらモゾモゾと逃げ場を探していましたが、獣医さんに注射を2本も打たれたのにうなり声ひとつあげずにとても信じられないほどいい子でした。

あっ〜っっっ!前回連れていたった病院で、くろじが四つ牙むいて狂ったように噛み付いてきたのは、そこの獣医さんが腰に注射を打った時だ!

そうだ、それまで点滴や注射は我慢していたのだ!「下半身は触ると嫌がる」とあれほど説明してあったのに、あの獣医さんは、こともあろうに腰に注射をしたんだ・・・。

そのとたんにこの世のものとも思えぬ悲痛な叫び声とともにくろじの四つ牙が下僕の腕に刺さったのだった。

痛む腰に注射をされれば、猫ならずとも人間でも相手にどうにかして痛みを伝えようとするもんだろう。

くろじは決して悪くなかったのだ。変形した骨で圧迫された神経の痛みですら、熱をだし、吐き気までもよおすのに、その病んだ部分に注射などされれば、それはそれは、想像もできないほどの痛みをともなったのだろう。

ごめんね、くろじ。下僕がバカだった。

獣医師さんを変えて正解だったのだ。

次の日の診察でも、注射を打たれたものの平穏無事に済み、くろじの汚名ははらされました。

−結論−
我が愛しのめんこちゃん、くろじは完治しない病気とわかり、下僕の過保護に拍車がかかること間違いないでしょう。

−教訓−
獣医師は過保護だと思える飼い主の話でもよく聞き、理解し、症状の原因を自分の知識と照らし合わせても、他に原因や悪いところがないのか、飼い主の話と照らし合わせて考えてくれる人がいい。


−ちなみに、人の話を聞かないおばさんはなんだったのだろう?−
受付の女性と、獣医師さんだけで充分事足りている話をしゃしゃりでてきて、その場を仕切った顔をしても、それは彼女の自己満足で、嫌悪感を与える以外の何ものでもない。
自分の存在をアピールしたいのなら相手を選ぶべきだ。誰もおばさんの自己主張を聞きに動物病院にくる人はいないということに早く気づいてください。

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