
前に住んでいた家は、築30数年という代物で、窓の網戸は、 窓枠から1〜2cm
位離れた所に、浮いているという感じでした。風が吹くとガタガタと、今にも外れてし
まいそうでした。
その上、その家は、近所の飼い猫の散歩コースとなっていて、猫の額ほどの庭は、
その猫達のトイレ場と化していたのです。
中でも、首に鈴をつけた目つきのするどい奴がいて、塀から車ポートの屋根にのり、
我が家の2階のベランタの窓からも中を覗く、恐ろしくずうずうしいやつでした。
当然、くろじの逆鱗にふれて、何度か、細くあけた窓の隙間で、にらみ合いの喧嘩
になっていました。
けたたましいうなり声に反応して、すぐに下僕が仲裁に入っていたのですが、敵もさる
もので、人間の顔を見ると、ずる賢い顔で、すぐに逃げてしまうのです。
そんな時、くろじは「よけいなことをするな!これからが本番だったのに!」
と、恨めし
い顔で、下僕をにらみつけ、時には、八つ当たりをしてきました。
そんな、ある日、下僕が1階でテレビを見ていると、「ウ二ァギャァー フーッンギャァー
アー」という尋常じゃない唸り声とともに ガタ、ドーン、バタバタと、騒音が鳴り響き
渡ったのです。
心臓が飛び上がるほど、びっくりして2階に駆け上がると、2階はすでに惨劇の後。
くろじは?と探すと、あの短い尻尾をビンビンに毛羽立てて、屋根の端まで、鈴猫
を追いかけて行っているではないですか。
下僕は、「くろじっ くろじっ くろじっ」と鳴きそうな声でくろじを呼びながら
はだしの
ままベランタをよじのぼり、そっと屋根におりてくろじの近くへ寄って行ったのです。
勝利に酔いしれて興奮しているくろじは、下僕を横目で一瞥しただけで、「うるさい」
とでも言うように、尻尾を横に大きくふって、まだ懲らしめたらないのか、鈴猫を追い
かけて行こうとしています。
下僕の「お願い!くろじぃ〜」と悲痛な呼び声に、すこし同情したのか、 くろじは、
下僕の方へ悠々と振り返り、その場で止まってくれました。
下僕は、必死の形相でくろじを捕獲して家の中に連れて入り、窓を閉めたのです。
部屋の中に入り、チャンスやチッチの鼻先で 「お前ら、オイラがやっつけたんだから
な!」と自慢するくろじを横目に下僕は、引き裂かれた網戸の網を泣きながら眺め
るだけでした。
そして、
「これはくろじがやったのでじゃない・・・、あの、憎き鈴猫が やったのだ。憎き鈴猫は
くろじの迫力に負け尻尾をまいて逃げたんだ。」 と自分に言い聞かせました。
しかし、その時のくろじの勢いはすごかったらしく、鈴猫は、我が家に少しの間これな
くなったようでした。
さすが、くろじ!
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