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 我が家の くろじ 


ちゃんす・チッチ・くろじ



  くろじ病院へ行く Part3 




 獣医さんが「じゃ、消毒しますね」と、くろじの首と背中の境目位を冷たい消毒液で
 拭くと、くろじは、にわかにびっくりして体をひねり嫌がります。

 そして、まさかこのままの状態で点滴の針を射して、点滴が終わるまで、くろじに
 大人しくしていろということなのか?!

 事態が薄々飲み込めてきた下僕は唖然。

 前に、通っていた動物病院は、猫が暴れないよう、注射などするときには、洗濯
 ネットに入れてくれたり、安全対策をしてくれたけど、ここの病院は、それもなく、
 点滴の間、くろじが大人しくしているとでも思っているの?

 そんな事は、絶対にありえない!

 くろじと付き合いの長い下僕には、身にしみてくろじに理解させられています。

 あ〜神様がいるなら助けてぇっっ!!

 下僕が唖然と顔を引きつらせているのも、全く意に介さない獣医さんは、
 「10分〜15分だからね」とプスっと、くろじに点滴の針を刺してしまったのです。

 まだ、自分に針が刺されていることに気がついていないくろじは、体をもぞもぞと
 動かして逃げようとするのです。
 しかし、今度は、針が刺さっている。動いて暴れて、針の先が途中で折れたりしたら
 それこそ、一大事!

 掌と額に汗して、顔面蒼白の下僕は、必死に「くろじっ、すぐ終わるからいい子で
 いてぇ」と願いを込めて話しかけていました。

 点滴の間の10分〜15分がどんなに長く感じたことか。

 途中、暴れようとするくろじを下僕が抑えながら、「くろじ、すぐ終わるからね。
 ちょっとだから我慢してね」と話しかけているのを聞いて、獣医さんが「まだまだ、
 10分はかかりそうですね」と、判りきったことを淡々と言いのけます。

 「そんなのわかってるわ!そんな事をこの状況の猫に話しかけて、猫が安心すると
 でも思うのか!」

 心の叫びを誰か聞いてくれ!状態でした。

 大体、暴れようとするくろじを必死に押さえつけているのは、下僕で、獣医さん
 は、いたって涼しい顔して点滴を眺めているだけなのです。

 手と足と体を押さえつけられるのが、気に入らないながらも、自分に点滴の針が
 刺さっている事には気づかなかったくろじは、なんとかこの点滴を終了させました。
 でも、点滴が終わった時のくろじの顔は、全くの野生に戻っていました。

 残るは、注射2本。

 「獣医さん、お願い気づいて。くろじは我慢の限界を超えている。注射は、すばやく
 お願いします」と祈る下僕。

 余裕の獣医さんは「家にも白黒のブチのニャンコがいるけど、だんながこの前
 噛まれてましたよ」などと、いたって呑気。

 「さッ 後は注射で終わりですよ」と言った、その大きな声にくろじがびっくりして、
 怯えているのにお願い気づいてぇぇぇぇっ!

 我慢の限界を超えたくろじは、1本目の注射を打たれた瞬間にこの世のものとは
 思えぬ雄叫びを 「ニンッニギャァァァァ」とあげ、大暴れ。

 必死に押さえつけようとする下僕を振り払おうと、全身の毛を逆立て、身も凍る
 雄叫びをあげます。

 なんとか注射は打てたものの、それには、ちょっとびっくりしたのか、獣医さんが、
 
 おもむろに

 「あっ、ダンボール持ってきますか?興奮したニャンコちゃとか、ダンボールに入れて
 あげると結構落ち着くんですよね」

 「あん?ダンボール?この興奮したくろじを暗闇などに入れたらよけい怖がるだろ?
 ダンボールに入れて落ち着くのは、こんなに興奮する前じゃないのか?」

 下僕の心の叫びなど全くと言っていいほど、意に介さない獣医さんは、いそいそと
 ダンボールを持ってくるや否や、くろじに押し付けて「中にはいっていいよぉ〜」などと
 のたまう。

 くろじは、今度は、何をされるのか目を白黒させていました。

 目の前に現れた物体が、普段、お客が来た時に自分が好んで隠れるダンボールと
 同じ物体なのか、すでにくろじには、判別をつけられないほどのパニック状態なの
 です。

 そして、キッパリと獣医さんの差し出すダンボールを拒否。

 苦笑いする獣医さんを見ながら、「あ〜っ、せめて下僕の家で使っている洗濯
 ネットでも持参してくるんだった・・・。こんなことになるなんて」

 下僕は、もう早く終わらせてくろじをキャリーバックの中にいれてやることしか考え
 られなくなっていました。

 獣医さんは、「猫ちゃんは興奮すると、後はもう言ってなだめるしかないんですよねぇ」

 「なにぉ〜 猫は興奮したら、言ってなだめるしかないだとぉ?誰だよ?この獣医に
 そんな夢物語を教えたのは!興奮してしまったら、何を言ったって聞かないよ!
 特にくろじはな!興奮する前に興奮させないように注意するのが人間の役目
 だろ!」

 まして、自分のテリトリー(家)の中ならまだしも、初めて連れてこられた病院で
 すよ?

 もう、どうでもいいから、残りの1本を早く、手早く注射してください。お願いです。

 もう、噛まれてもいいから早く終わらせたいと、覚悟を決めた下僕は、全精力でくろじ
 を押さえつけ、「早く残りの1本をやってしまって下さい」とアピールしました。

 獣医さんは、「点滴と注射もしたから、今度は何処に注射します?」と、くろじの
 腰の辺りに見当をつけました。

 「あっくろじの下半身は触らないで!言ったでしょ。くろじは後ろ足を2回も骨折し
 ていて、下半身を触られるのをとてもとても嫌がるとぉぉぉぉっっっ」

 間に合いませんでした。すばやく注射する、それだけはプロなのでしょう・・・。

 下半身付近に、注射針を刺された瞬間、くろじは悲痛な叫び声をあげるや、
 抑えようとする下僕を振り払おうともがき、振り払えないと思った瞬間、その鋭利
 な4つ牙を下僕の腕に突き刺しました。

 グリグリと牙を差込み、全身の力をあごに集中させ、下僕の腕を噛んでいるくろじ
 は、少し、幸せそうでした。

 その光景にびっくりした獣医さんは、注射を落としてしまい、慌てて注射器を
 確認。

 「大丈夫です。注射はできています」と一言。

 下僕は、汗ではなく、腕に4箇所、血をしたたらせながら、くろじをようやくキャリー
 バックに戻してやれる事ができました。

 獣医さんが「猫の噛み傷は腫れて膿が出るから病院に行ったほうがいいですよ。
 とりあえず洗面所で洗ってください。消毒液をつけておきますから」という言葉も
 遠くから聞こえていました。

 診療室をでる時、診療室は、くろじの毛だらけでした。

 どれほどの大いなる戦いをなしとげたのか。


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