
下僕の実家は、下僕が小さな頃からいつも猫か犬を飼っていました。
下僕の父親は何故か、猫に好かれるタイプで、猫と遊ぶのもプロ並で、猫を
飽きさせずに、いつまでも遊べる人でした。
なので、下僕が最初に記憶にあるのも猫です。
最初の覚えている猫は、「トラ」。多分トラ柄の一般的な雑種模様だったので、
名前がトラだったと思うんですが、この猫は下僕が小学校に入る前の小さな頃に
飼っていた猫です。
今でも、鮮明に覚えているのは、トラはカレーライスが大好きで、下僕がまだ小さくて
食べきれなくて残してしまったカレーライスをトラはいつも食べていたという事。
昔のカレーだからそうだったのか、今考えるとちょっと不思議なんですが、本当に好物
がカレーライスでした。
家族の中で一番小さな下僕を、自分の子分だとでも考えていたのか、いつも下僕
のカレーライスを狙ってたのを覚えています。
もう1つ、トラには、癖があり、その癖は家出でした。
春になり雪が解けて暖かくなる頃に、気まぐれに旅立って、半年位の間、いなくなっ
てしまうんです。
そして、秋になり、雪が降る前に、トラは、夕飯が必ずカレーライスの日にプラっと、
下僕達家族の元に帰って来てくれました。
何故か必ず、カレーライスの日でした。
戻って来た時のトラは、見る影もないほど、痩せて毛もボロボロになっていて、誰かと
喧嘩でもしたのか、時には怪我をしている事もありました。
トラは、冬の寒い間を下僕の家で過ごして、体を休ませて皆に愛情を貰い、ぬくぬ
くとかわいがられて栄養をつけ、そして満足すると、気まぐれな放浪癖に火がついて、
また、誰にも告げずに旅立っていくのです。
そんな事を何年か繰り返していました。
トラが放浪している間、一緒に寝てくれるトラがいなくて淋しかったのを覚えていま
す。
最期にトラが戻ってきたその日の夕飯もカレーライスでした。
下僕が夕方、玄関に行くと、トラが門の上にちょこんと座っていたのを覚えています。
下僕は、家の中に「トラだ!トラが戻ってきたぁ!」と叫んで、「やっぱり、カレーライス
の日にトラは戻ってきた!」と家族で喜びました。
そして、いつもなら春になって暖かくなってからの旅立ちのはずが、春を待たずに、
トラは突然いなくなり、二度と帰ってきませんでした。
たぶんトラは、自分の死期を感じてたんだろうと思います。
最期に元気な姿を下僕達家族に見せて、そして誰にも自分の最期の姿は
見せたくなかったんでしょう。独りでひっそり旅立ったんだと思います。
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